再び4

虎首長:…吉兆の気だな

    それでいて強い気だ

    しかしだからこそ不安だ

    この気がもたらす幸福は、誰の為のものかわからないものでな

 

    弱まったな

    一体何をしたのだ、時鬼よ。いや…

    お前は今時鬼と言っていいのか

    天神の領域は... 我々が知るものとは全く異なる

    その強い力で何をしでかすかわからない

    限りなく澄んだ清らかな気で、罪なき人間を幾度となく眠らせたのが天神だ

    それが正に人間の為だとのたまいながら

    天神の領域にむやみに手を出すと多大な災いを被る

    カウリよ。私を見てよく分かっているはずだ

 

カウリ:今更、災いを被る事が怖いものか

    俺は天神になるのだ

    その程度の力がなければ白魔地を倒せない、

    その程度の力がなければ反許諾を破れないからだ

    俺にはその位の力を持たねば、

    こんな風に床を這うわけにはいかないから

 

アロン:時鬼カウリは白魔地首長の腹に穴を開けました。

    それなら天神カウリは何が出来ると思いますか?

 

セスル:こいつはアゲハが自ら助けた時鬼なんです

    そして今度はこいつがアゲハを助けます、首長様

 

虎首長:ほぉぉ…

    確かに、感じる気を見る限り遊んでいた訳ではなさそうだ...

 

ジンス:ご存知でしたね? 俺が外で聞いていたのを

 

    …… 貴様も当然俺の気配を感じただろう

    それなのにそのまま盗み聞きさせておくなんて

    俺が雨和院に報告するのは当然じゃないか!

    それとも俺なら制圧できるという事ですか、首長様!

    俺は山神会の動向を監視する為に山神会にいたんだ、

    疫神問題を起こした山神会首長、あなたの監視役だ!

    百栄宮の番人が舐められてるのか?

 

虎首長:断じてそんなつもりはない

    ただ時鬼と戦いながら君が叫んだ言葉を信じてるだけだ

    アゲハ殿の親友としての姿をね

    かなり早くから戦いを見ていたんだ

 

ジンス:俺も一緒に行きます

    アゲハ... 今妖鈴の泉にいるそうですね

    本人に会って話を聞かなければ

 

    貴様、時鬼よ

    俺を「雨和院」と言っただろう

    雨和院が何の責任も取らぬ所のように生意気な口をきいたな

    長い間白魔地と直接対立してきたのはまさに雨和院だ!

    誰よりも白魔地を倒したいのは間違いなく雨和院なんだ!

    だから俺があえて雨和院の代表として、話を聞こう

    あくまでもアゲハの話を聞くと言う事だ

 

カウリ:そっちこそたいそう生意気な男だな

 


 

カルセ:…アゲハ

 

    (お前はまた)

    (私の知らないところで)

    (私が知らない力で)

 

雨和院女:カルセ先生!

 

カルセ:はい、何でしょう?

 

雨和院女:アゲハの部屋から出てきた物です、

     すべての調査のために魂死学科に送られましたが...

     これは呪術の痕跡が全くありませんでした

     アゲハが自分で書いた手紙のようです、

     カルセ先生にです

 

アゲハ:[…カルセ]

    [心配するなと言っても無駄だろう]

    [でも、俺はこうしなきゃならなかった]

    [雨和院は俺の話しは死んでも聞いてくれないから]

    [修羅を倒すにはカルセに心配かけるしかないな]

    [ごめん]

    [カルセが一人で何かを準備してるのは分かってる]

    [俺に言えない何かを]

    [それはきっと俺の為だろう。いつもそうだったように]

    [互いに居場所を知らなくても、俺らはきっと同じ戦いの準備をしている]

    [だから一緒に頑張ろう]

    [同じ戦場にいると思えば、少しは安心するんじゃない?]

 

カルセ:お前って奴は、まったく

 


 

虎首長:さあ

    入ってみよう、

    妖鈴の泉へ

 


 

<ふぃるる先生コメント>

アゲハの人生の中で最も長く書いた文でしょう、おそらく

 

修正日:2023/09/30



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