[西の地の小国、到来]
[神竜が自らが建てたこの小さな国は建国94年でその短い幕を閉じた。]
[王の死によって土地は当時勢力を広げていた百漢に自然と吸収された。]
[その威容も、その勢いも、]
[到来の名前と共に消えてしまった]
[神竜とその傍らを守った将軍だけが物語になって]
[辛うじて忘れられない程度に伝えられる様になった]
カホン:で…殿…下…
(重いです)
(腕が、足が、体が...)
(重くて持ち上げられません)
(殿下)
(あれしきの槍、抜いてしまえばいいだけなのに)
(ああ…十歩の距離がこうも遠いとは)
(行かねば)
(殿下の所に行かなければ)
(早くあの槍を抜き取って、神源に…)
(…殿下…殿下…)
死神 :やめるのだ
雑鬼になったばかりの者は現世の物に触れない
それも訓練が必要だろう
チッッ...無駄か
今は何も聞こえないだろうな
戦争だったのか
これは一様に自分の名前も忘れた状態だな
おびただしい恨みだ
カホン:(何も掴めない)
(何もできない)
竜 :神竜が死んだ
この地の神竜が死んだ
悲しくて、
心が痛い、
カホン:あ…あああ…
(俺が至らぬせいだ)
ああああ…
(俺の力が足りないから...)
[そして]
[50年程が経った]
爺 :はああ、この地を踏むのがいつぶりかね
百漢神竜の統治に入ってここも大分落ち着いたな
昔の戦場だし雑鬼が少しいるが
何... 雑鬼はこちらから刺激しなければ何もしない
ケジャラは爺にちゃんと付いてくるんじゃぞ
そんなにキョロキョロしない…ウン?
ケジャラ:お爺ちゃん!
こいつがさっきから何か言ってる-
爺 :ほほ、爺の話を全く聞かんなあ
カホン:…なる…
べき…だっ…た…のに…
爺 :こら、近寄ってはならん!
カホン:殿……下…
爺 :ほおお…
この雑鬼も全く、ほとばしる気が不穏極まりないな
なあ、雑鬼よ? その恨みを晴らせないと大変だ
姿を維持する事も出来なくなるぞ
使者を呼んでやるから早くこの世を離れなさい
苦労したのだ死んだら楽にならなくちゃ
さあ、名前をまだ覚えているか?
使者が名前を三回呼んだら'はい'、と返事さえすればいい
カホン:ウル…タリ……カ…(올...타리.....가...)
爺 :名前が何と?うん?
カホン:(あなたを守るために)
ウ…ウル……リ…カ…(우...올......리...가...)
(強い垣根に)*강한 울타리가:カン ウルタリカ(ガ)
爺 :ウリ?
ケジャラ:カウリ?
カホン:(ならなければいけなかったのに)
爺 :ああ、ほれみなさい!
もう姿が崩れ始めた!
ケジャラ:おや、雑鬼?
カホン:(何だ、俺はどうなったのだ)
(寒い)
(そして眩暈がする)
(体の中に風が吹いているようだ)
(息がつまる。 いや、心がくすぐられる)
(なんだろう、この空しい感じは)
(腹が減って、)
(喉が乾く)
(周りで揺れる風景の中に、)
(かすかに甘い匂いがするものがあった)
(思わず手を伸ばして握りしめ、)
(それを貪るように口の中に押し込んだ)
(それで切望していた何かが満たされる気がした)
爺 :ふぃ!あ…赤い瞳孔…!
カホン:(何か…)
(しなくてはいけない事があったような)
(何かをやり遂げねばならなかったのだが)
爺 :時…時鬼だ
時鬼になった…!
カホン:(わからない)
(今はただ…)
(喉が乾く)
<ふぃるる先生コメント>
カウリの過去、<蜘蛛の檻>の話を終わります。ありがとうございます。
修正日:2023/09/07
<管理人コメント>
カウリの名前は韓国語の音によるケジャラの聞き間違いから生まれたので韓国語の表記も一緒にしています。
つなげるとこれ↓
당신을 지키기 위해서 강한 울타리가 되었어야 했는데
あなたを守るために強い垣根にならなければならなかったのに
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ネク (火曜日, 17 4月 2018 18:12)
カホンちゃんの思いが悲しすぎる
殿下のとこに必死に行こうとしてるのに
ぴょん吉 (日曜日, 25 3月 2018 12:00)
名前の由来がとても切ない(T-T)